頬骨弓の再建

こんにちは。

8月も早や、半ばを過ぎました。。夏は特に時間が経つのを早く感じますね。

さて今日は頬骨弓の再建のお話です。

頬骨はアーチインフラクチャー法(頬骨弓骨切り内側移動術)がない時代には頬骨骨体部や頬骨弓部を削って縮小を行っていました。

その時代には頬骨や頬骨弓を削りすぎた結果、術後に頬骨の骨が吸収し頬骨弓が極端に薄くなったり、ひどいと頬骨弓が無くなってしまっている症例もありました。また、昔は骨を削るときに注水せずに削る人も多かったため、骨が切削器具との摩擦による発熱で火傷を起こし、火傷をおこした骨が全部吸収して無くなってしまうこともありました。

ここ数年のことですが、若い時(20代)に頬骨を縮小したが歳をとって頬が落ち込んで実際よりも老けて見えるとの主訴で、頬骨、頬骨弓の再建を目的にマックスに来られる方が増えました。

当院での一般的な頬骨の再建法は過去のブログhttps://www.maxfacsginza.com/blog/頬骨の再建その3/を見ていただけるとわかって頂けると思いますが、

頬骨弓が無くなっている場合はどうするのか?

新しく頬骨弓を作らなくてはなりません。新しい頬骨弓を作る方法は大きく分けて二つに分かれます。

1. 自家骨(肋骨、腸骨など)を移植して再建する。

この場合、遊離血管柄付き移植骨か単なる遊離移植骨か、ドナーサイトをどこにするかで結果が異なってくると思います。形態としては腓骨か肋骨を使うようになると思います。単なる遊離移植では例え移植骨が運良く生着したとしても経年と共に骨吸収が起きる可能性があります。その点では遊離血管柄付き移植骨の方が有利ですがドナーサイトからの血管柄付き移植骨の採取やレシピアントサイトでの血管吻合などが必要となり手術時間も数時間かかります。

2. 人工材料を使って再建する。

体と親和性の高い人工材料を使って再建する。

当院ではクラニオセメント(頭蓋骨折用セメント:メタクリル酸メチル)とシンセスミッドフェイスチタンプレートのハイブリットを用いて頬骨弓の再建を行っています。リン酸カルシウム系の人工骨では曲げ強度が弱く薄い頬骨は再現することができません。人工材料を使うのでドナーとなる自家骨を採取する必要がありません。またよく懸念されるのが自家骨よりも術後感染しやすいのではないかと言うことですが、私の経験では術後感染をきたした症例はありません。この材料で頬骨弓やエラを再建した方は皆さん術後経過良好で、何ら問題なく術後10年程経過している方もいらっしゃいます。

クラニオセメントとチタンプレートのハイブリットで作成した両側頬骨弓。実際に患者様にセットしたものです。